街中や繁華街で「墓地建設反対」とか「斎場建設反対」のビラやのぼりをよく見かけます。
トモダチと先日出かけたときにも、ちょっとおしゃれな商店街で
大きな黄色いリボンが電柱やそれぞれの店舗のドアノブに結ばれていたのを見ました。
その地域での「反対表明」のリボンだそうです。
「反対か。。自分だってお世話になるのに」と私が言ったら
「そうだけれど、でも本心は、そんなところでしょう」とトモダチ。
確かに。 と 私は思いました。 え?「確かに」??
なんで「確かに」なんだろ。
自問自答しました。
それぞれ実際に反対運動をしている方々はどんな理由があるかわからないけれど
私がもし反対するのだったら、単純に大人げない理由です。
「街の景観を損なうから」
「縁起でもないから」
「線香臭いのが陰気っぽいから」
こんなところです。
でも、もう一度これを書きながら読んでみて、
どれ一つとっても「自分勝手な理由」なんですね。
だって、絶対に無いと困るんですから。
この話を母と今朝しました。
母は、冠婚葬祭専門の仕出屋でテーブルセッティングの仕事を20余年しています。
お客様にお酒を注ぐことはなく、記念撮影とか焼き場に行って会場が空っぽになった時に
テーブルに料理をセッティングする仕事です。冷たいものは冷たく、温かいものは温かく出す。
そしてこれはまったくのボランティアですが、お客様の晴れ着や喪服の着付けもします。
そんな母は開口一番 「絶対に無いと困るのにね」と。
「でもそんなことは分かりきっているけれど、いざ自分の住んでいる近くにあったら、ちょっと閉口しない?」
と私が言ったら、
「私はもうこういう仕事をしているから、全然なんとも思わないし、
逆に、お葬式を出した事がある人なら嫌だとは思わないと思う」
と、母は言いました。
我が家の近くに、やはり反対のビラを貼っている地域がありました。
反対している為、大きい斎場が建設できないから、
お寺が経営している幼稚園を斎場にして運営してきました。
でも、その地域のそれぞれの家から、次々と葬式を出す事になって有り難さが分かると、
そのビラが一枚、また一枚とはがされて行きました。
最後にどうしてもはがさない家が一軒残りました。
斎場とは目と鼻の先です。玄関でたらすぐのところです。
ある日、その家から葬式を出しました。
ずっと反対していたので、目の前の斎場に頼む事ができず、
昔からある桐ヶ谷斎場に頼むことにしたそうです。
しかし、予約が一杯で、空きが出るまで、ドライアイスを入れて自宅保管だったとのことでした。
しかも、葬儀は土砂降りの降る中、執り行われたそうです。
いつまでも反対していたから「バチがあたった」という非現実的な話をしているのではありません。
近くでできるならば、悪天候でも、弔問に来て下さる方の足元も心配がないでしょうし、
目の前なら、ドライアイスも必要がなかったかもしれません。
以上は、母が話した実際に有った出来事です。
そういうケースを何百回と見てきている母だから分かるのでしょう。
近くにあればとっても助かる、という事を。